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記事0 - earth1(FRaU the earth)

なぜ談志は“落語界のマルクス”なのか?

──談慶さんの中で『資本論』への関心が薄れた時期もあったそうですね。

談慶 学生時代、読むのに挫折した後、就職活動をする頃になると、古臭いなと思うようになりました。時代は1980年代の後半、日本はバブルに向けて好景気が続き、片やソ連は行き詰まる一方で、やがて崩壊します。私は(衣料メーカー大手の)ワコールに内定をもらい、友人たちと「マルクスなんて時代遅れだ」「近代経済学の勝ちだな」などと話していました。資本主義は盤石だ、と。おそらくバブルが崩壊した後もしばらく、日本では多くの人がそう考えていたと思います。ところが……ね。

私は3年でワコールを辞め、バブル崩壊の年と言われる1991年に談志門下に入門しました。驚くことに、それから30年以上、日本は停滞したままなのです。不況の中、格差拡大や貧困などの問題が深刻化し、コロナ禍もあって経済はさらに沈みました。これは『資本論』が喝破した状況だと思いましたね。マルクスはひょっとしたら談志の口調で「ほーら、俺が予想した通りだろ」と言ってるかもしれない(笑)。

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その意味で、落語も『資本論』も、未来を向いた「予言」のメッセージなのです。そして、片や江戸時代の日本に生まれ、片や19世紀のヨーロッパで書かれた「古典」でもある。そんな風に両者の交点をいくつも見つけ、それらを線で繋いでいくように書き進めました。

──落語と『資本論』に加えて、マルクスと談志師匠の共通項も指摘されているのも興味深く読みました。

談慶 「立川談志は落語界のマルクスだった」とね。やや強引な仮説ですけれども(笑)。

マルクスは「すべては疑いうる」という名言を残しています。実際に彼は、当時の社会の前提をことごとく疑い、工業化と共に成長していく経済の仕組みを疑い、徹底的に批判して、『資本論』を書き上げます。

談志も若い頃から売れまくり、国会議員にもなるなど時代の寵児でしたが、既成の枠組みやしきたりに疑問を持ち、やがて落語協会を脱退。「落語立川流」を設立して家元を名乗り、数々の名演を残し画期的な落語の理論化を成し遂げた天才でした。

やはり世間で言われていることを疑ってかかり、「新聞で正しいのは日付だけだ」とよく話してましたよ。「環境を保護しろっていうけど、究極の環境保護は人類滅亡だろ」とか(笑)。

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