マルクスは現状を予言していた⁉
──落語と『資本論』という異質なものを重ねて共通項を見つけていく、という切り口にまず驚かされました。どういういきさつで発想したのですか?
談慶 新型コロナウイルス問題の影響が非常に大きかったです。コロナ禍によって、それまで元気に働いていた多くの人が行き詰まり、苦境に追い込まれ、時に生命を落とすケースも出てきましたよね。その中で、「今の社会は高度な資本主義をあまりにも盲信し、依存しすぎているのではないか」と考えるようになりました。
私も仕事が激減し、コロナ感染もして苦しみましたが、それでもかろうじて落語と著作活動によって家族を養うことができていた。しかし、一歩間違えば、行き詰まる側になっていてもおかしくなかったとしみじみ感じたんです。たまたまラッキーなだけで、「こちら側」に留まれたのだ、と。
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紙一重の差で、天と地ほど違う境遇に置かれてしまうわけです。今まで、おそらく大半の人が「絶対大丈夫」と信じてきた資本主義社会で、なぜこんな事態になるのか。それを考えるために、資本主義の原理を知っておきたくなった。で、資本主義の問題点や限界を分析した『資本論』に救いを求めるように、改めて読んでみました。まあ、コロナ禍で仕事がなくなって読書する時間ができたことも大きいんですが……。
読み始めてまもなく、「マルクスはまるで今の混沌とした状況を予言していたようだ!」という印象を持ったんです。それは、『資本論』が書かれた頃から資本主義の原理原則が全然変わっていないことの証で、今も読まれる値打ちは十分にあると感じました。
やがて、『資本論』には落語に通じる部分がある、落語で読み解くことができそうだ……と考えるようになり、本の構想がはっきりしていったんですね。